あらすじ

本作は、詩人として活躍される斉藤倫さんによるはじめての長篇物語です。この物語の主人公は絶対に捕まらないどろぼうのどろぼん。そのどろぼんが、物語の語り手である刑事に捕まるところからお話ははじまります。物語の舞台となるのは、どこでもないけれど、どこでもある町。最初、まるで書き割りのような印象を受けるのだけれど、実は奥行きも陰影もあって、そこで暮らす人々の息づかいや温もりも伝わってくる、なんとも不思議な魅力があります。この不思議な世界を絵にしてくださったのが、絵本『おうさまのおひっこし』の作者でもある牡丹靖佳さん。斉藤さんは、牡丹さんの描いた挿絵を見た瞬間、「無国籍」ではなく、「全国籍」という言葉が浮かんだそう。「どこでもないけれどもどこでもある町」の魅力が、あますところなく描き出されています。実はこの挿絵、『どろぼん』の世界にぴったりあうよう、ちょっとだけ特別な方法で描かれていて、印刷もその方法にあわせたやり方をしています。
※サイズ：135 x 194 mm

著者紹介

著者斉藤倫（さいとうりん）1969年生まれ。詩人。2004年『手をふる 手をふる』（あざみ書房）でデビュー。他の詩集に『オルペウス オルペウス　新しい詩人6』（思潮社）、『さよなら、柩』（思潮社）、『本当は記号になってしまいたい』（私家版）がある。ほかに、絵本『いぬはなく』（絵 名久井直子/ヒヨコ舎）、『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』（PARCO出版）編集委員など。今年デビュー10周年。本作がはじめての長篇物語となる。
画家　牡丹靖佳（ぼたんやすよし）1971年、大阪府生まれ。現代美術作家。絵画を中心に国内外で作品を発表するほか、絵本や本の装画を手がける。絵本に『おうさまのおひっこし』（福音館書店）などがある。