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最後はなぜかうまくいくイタリア人
あらすじ
実用性より見た目を重視。「空気を読む」という概念が存在しない。ビジネスは好き嫌いで決める。 ―ファッションから車まで、独自のセンスと哲学で一流品を生み出してきたイタリア人の人生観・仕事観とその生態を痛快に分析。
読者の中でもこの本を評価してくださったのは、イタリア人に痛い目に遭われた人たちだった。今までのイタリア人との苦労が多ければ多いほど共感してくださる度合いも強いように思えた。最も嬉しかったのは「この本を読んでからイタリア人に腹が立たなくなった」という感想である。どんな異文化でもそれを律している法則のようなものを理解すれば、いらだつことはなくなる。
私もそれまで直感的に学んできた「イタリア人の法則」というものを言語化して認識するようになった。法則を手に入れるとそれを使いたくてしかたないのが浅はかな人間の常で、私もその例に漏れない。イタリア取材で日本のスタッフと同行するたびに「イタリア人の法則」を使って、行動予想をして皆で楽しんでいる。
「この生産者はしかめっ面で小難しいワイン哲学を論じていますが、もうじきマンマから電話がかかってきますよ」とか「このドライバーは珍しく時間より前に到着して私たちを待っていましたが、どこかでスタンドに停まって、私たちを待たせてガソリンを入れますよ」とか「撮影用のワインボトルについてはすでに何回もリクエストしましたが、この担当者は必ず間違うと思われます」といった具合に前もって予防線を張っておく。そうすると本来「なぜリクエストしておいたことがちゃんとできてないんだ」と怒りが爆発するところが、「なるほどね。やっぱりこうなっちゃうんだ」と笑い話ですんでしまうことが多い。やはり言葉にするということは様々な摩擦を悪魔払いしてくれる魔法の効果があるのである。
最近は日本を訪れるイタリア人が増え、今度は彼らに「日本人の法則」を教えてあげなければならない機会も増えた。日本人の行動にもイタリア人にとって腹立たしいことやイライラすることは当然ある。だから前もって「このディナーは19時開始なのに、なぜか18時集合となっています。18時からおそらく5分ほど打ち合わせがあるだけで、その後55分は何もすることがないと思われます。イタリアはちょうど事務所が開く時間ですので、業務連絡でもしておいてください」とか「前に座っているお客さまはワインを3杯ほど飲むと居眠りを始めると思いますが、それはあなたの話が退屈だからではなく、日本人の多くはアルコール分解酵素を持っていないからですよ」とあらかじめ警告しておく。そうすると「失礼じゃないか!」とはならずに、「日本ってそうなんだ」と笑い話になる。笑いあるところに衝突はない。備えあれば憂いなしである。
この本で紹介したのは私なりの「イタリア人の法則」だが、完成にはまだほど遠く、日々アップデートを繰り返している。ただ異文化と触れる時に、その国の法則を知り、その国の人の行動を予想して、笑い飛ばすことができれれば、様々な衝突が避けられるような気がする。
この本が日本とイタリアの関係をさらに実り豊かなものにする潤滑油の働きを少しでも果たすことができれば何よりの幸いである。
著者は「イタリアのミシュラン」ガンベロ・ロッソの覆面調査員を務める唯一の日本人。2014年、イタリア大統領より星勲章受賞。
著者紹介
ワインジャーナリスト
1959年京都生まれ。東京大学経済学部卒業。83年から89年までローマの新聞社に勤務。現在、イタリアと日本でワインと食について執筆活動を行っている。イタリアでは2004年からエスプレッソ・イタリアワインガイドの試飲スタッフ、06年からガンベロロッソ・レストランガイド執筆スタッフを務め、1年の3分の1をイタリアで過ごす。日本ではワイン専門誌を中心に執筆し、ワインセミナーの講師、講演を行う。2013年、グランディ・クリュ・ディタリア最優秀外国人ジャーナリスト賞受賞。2014年、イタリア文化への貢献により“イタリアの星勲章"コンメンダトーレ章(Commendatore dell' Ordine della Stella d'Italia)をイタリア大統領より受章。
| シリーズ名 | --- |
|---|---|
| 発行年月 | 2015年9月 |
| 本体価格 | ¥1,300 |
| サイズ・版型 | 四六判(127×188) |
| ページ数 | 232ページ |
| 内カラーページ数 | --- |
| ISBNコード | 9784532320348 |
| ジャンル | ビジネス > ビジネス・経営・自己啓発 |
| 映像化・ メディアミックス実績 |
なし |




